泣かないで登校できた子どものポケット

 新1年生にしてみれば、小学校生活に慣れるのに時間がかかる場合があります。小学校では、幼稚園や保育園にはいなかった新しい友だちや先生との出会い、生活が区切られる時間割というもの、そして、全く新しい学校という生活空間に慣れなくてはならないからです。

 ある女の子は、入学式の次の日から毎日、泣きながら登校してきました。しかし、先週の金曜日から泣かずに登校してきました。泣きながら登校していた時は、右手には必ずタオルハンカチを握りしめていました。それが、泣かずに登校できるようになった日から、タオルハンカチはその子のポケットにしまわれていました。泣かないのだから涙も流れない。だから、ハンカチはポケットに入っている。それは当たり前です。

 しかし、ハンカチをポケットにしまうという行為の中に、その子の「もう泣かないぞ」という意思表示があるように感じました。もしかすると、ハンカチには母親の香りを連想させる洗剤の香りがついていて、涙をふくたびに、その香りを心の頼りにしていたのかもしれません。「泣かないぞ」と決めたからその香りがついたハンカチと決別し、ポケットにしまったのかもしれません。

 子どもは、日に日に成長していきます。その成長をたくさん見取り、たくさんの拍手をしてあげたいと思います。